他社システムの引継ぎで失敗しない進め方|資料がない状態からの手順

前任者や委託先が抜け、資料がほとんど残っていない他社システムの引継ぎを任された方へ。属人化のリスクと、最初に何をすべきかを、CTO代行としての実体験を交えて解説します。

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運営者・AIエンジニア / IT歴36年以上

他社システムの引継ぎで失敗しない進め方|資料がない状態からの手順

前任の担当者や、システムを作った委託先が抜けたあと、資料がほとんど残っていないシステムを引き継ぐケースは少なくありません。そうした相談を、中小企業やスタートアップの方からよく受けます。資料がない状態からでも、順番さえ間違えなければ立て直せます。

この記事でわかること

  • 資料がほとんど残っていない他社システムでも、決まった手順で引き継ぎを進めることができます
  • 引き継ぎを後回しにすると、担当者が一人抜けただけでシステムが動かせなくなる「属人化」のリスクが高まります
  • 引き継ぎで最初にすべきことは、資料を作ることではなく、今のシステムがどうなっているかを調べて見える化することです

多くの企業で、他社システムの引き継ぎができていない

これは特別に運が悪いケースではありません。経済産業省が2025年5月にまとめた報告書によると、古い仕組みのまま残っているシステム(レガシーシステム)がある企業の割合は、全産業分野で61%にのぼります。大企業では74%、中小企業でも約半数にあたる約50%です。多くの会社が、同じような状態を抱えているのです。

同じ報告書では、企業がこうしたシステムを見直すきっかけとして、システム障害やトラブルが起きたあとに対応するケースが最も多いという結果も出ています。つまり、多くの会社は、何か問題が起きてから初めて、システムの中身と向き合っているということです。

引き継ぎを後回しにすると、何が起きるのか

資料がなく、特定の担当者しかシステムの中身を分かっていない状態を「属人化」といいます。その担当者がいなくなったとたん、誰もシステムに手を出せなくなる状態のことです。

属人化が進んだシステムには、次のようなリスクがあります。

  • ある不具合の直し方を、担当者しか知らない場合、その人が抜けるだけで業務が長期間止まりかねません
  • 障害が起きたとき、原因を特定するまでに時間がかかります
  • どこを直したら、他のどこに影響が出るのかを、誰も判断できなくなります
  • 新しい機能を追加したいとき、どのくらいの作業量になるのか見積もれなくなります

このリスクは、社内の担当者だけでなく、システムの保守を外部の会社に委託している場合にも起こります。委託先で担当していたエンジニアが辞めると、それまでと同じ対応の速さや質を保てなくなることがあるのです。引き継ぎのあとに機能追加や作り直しを検討することもあるはずです。その見積もりが妥当かどうかの確かめ方は、システム開発の見積もりは妥当か、工数の内訳から確かめる方法で説明しています。

こうした属人化が進む背景には、次のような事情があります。

  • 日々の業務量に対して人手が足りず、後任を育てる時間を確保できない
  • パソコンやネットワーク、セキュリティなど、扱う範囲が広く、新人の教育に時間がかかる
  • マニュアル作りや、情報を共有する仕組み作りが、後回しになりやすい

つまり、担当者の怠慢ではなく、会社の体制として起きやすい問題だということです。

資料がない状態から、まず何をすべきか

資料がまったく残っていないシステムを前にすると、多くの方は「まず資料を作らなければ」と考えます。しかし、資料を作る前に、必ずやるべきことがあります。それは、今のシステムがどういう仕組みで動いているのかを調べる作業です。

私自身、資料が一切なく、プログラムの中にも説明の書き込み(コメント)がほとんど残っていないシステムを引き継いだ経験があります。そのときは、プログラムを一行ずつ読み解くところから始めるしかありませんでした。

この経験があってから、引き継ぎの案件では、資料を作る前に「今の状態を見えるようにするためだけの調査」という工程を、必ず最初に設けるようにしています。この順番を飛ばして資料作りに入ると、間違った理解のまま資料が出来上がってしまい、かえって混乱を招くからです。

具体的には、次の順番で進めます。

  1. 今のシステムが、どんな仕組みで、どこと連携して動いているのかを調べる(業務内容の把握)
  2. 調べて分かったことを、誰にでも伝わる形に整理する(情報の整理)
  3. 整理した内容をもとに、実際に引き継ぎ作業を行う(実際の引き継ぎ)

資料を作るときは、次の点を意識すると、あとで役立つものになります。

  • 業務の流れを、文章だけでなく図にして、全体の流れをひと目で分かるようにする
  • 専門用語をそのまま使わず、誰が読んでも分かる言葉で手順書を書く
  • 資料の書き方をそろえ、いつ誰が直したのか分かるように管理する

引き継ぎの体制を整える具体策

システムの中身を調べるだけでなく、引き継ぎ作業を計画して進めることが不可欠です。ここでは、実際の現場で効果があるとされている工夫を紹介します。

進め方を決める工夫

  • 計画書の中に、引き継ぎで何をするかをはっきり書いておく
  • 各作業の担当が誰なのか、体制図で分かるようにしておく
  • 引き継ぎ作業を細かい単位に分けて一覧にし(この一覧をWBSといいます。作業を分解して見積もりや進み具合の管理に使う表のことです)、それぞれにかかる時間を見積もる
  • 新しい担当者向けに、受け入れの手順をあらかじめ決めておく
  • 「ここまで終わったら次に進む」という区切りを、工程ごとに決めておく

資料をそろえる工夫

  • システム全体を見渡せる概要図や一覧資料を、詳しい設計書とは別に用意する
  • 開発のルールを、社内で決まった形にそろえて資料にする
  • 新しく入る人向けに、業務の全体像を説明する資料と、専門用語をまとめた用語集を用意する
  • 本番用とテスト用、それぞれの環境の設定値を一覧にしておく

人を育てる工夫

  • 誰が抜けると困るかをあらかじめ洗い出し、対策を考えておく
  • 教える担当者を決め、二人一組で作業しながら学ぶ機会をつくる
  • 定期的に振り返りの時間を設ける。良かった点・問題点・次に試すことの3つに分けて話し合うKPTという方法がよく使われます
  • 誰を、いつまでに、どこまで育てるかの計画を立てておく

引き継いだあと、また同じ問題を起こさないために

引き継ぎがうまくいっても、それで終わりではありません。時間がたつと、また特定の担当者に知識が偏ってしまうことがあります。これを防ぐには、次の4つの組み合わせが有効です。

  • システムの概要や、外部とのつながりを、常に文書として残しておく
  • 繰り返し行う作業は、手順を決めて誰がやっても同じ結果になるようにする
  • 複数の担当者が、同じシステムを理解できるように、教え合う機会をつくる
  • 社内の担当者は業務の判断や利用者への対応を担い、技術的な調査や修正は外部の専門家に任せる、という役割分担を決めておく

社内に技術の責任者がいない会社では、最後の役割分担がとくに効果的です。日々の判断は社内で行い、技術的に難しい部分だけを、信頼できる外部の技術顧問に任せる形にすれば、少ない人数でも属人化を防ぎながらシステムを運用できます。技術の責任者を置かずに判断だけを外部に任せる方法は、CTOがいない会社の技術判断は、CTO代行という選択肢で変わるで詳しく説明しています。

よくある質問

Q. 資料がまったく残っていません。それでも引き継ぎはできますか。 A. できます。資料がないことは珍しくありません。まず資料を作ろうとせず、プログラムや設定を実際に調べて、今のシステムがどう動いているのかを見える化することから始めてください。この調査が終わってから資料を作るほうが、結果的に早く、正確なものができあがります。

Q. 引き継ぎには、どのくらいの期間がかかりますか。 A. システムの規模や、資料が残っている量によって大きく変わるため、一概にはお答えできません。まず現状を調査し、システムの複雑さが分かった時点で、初めて現実的な期間の見積もりができるようになります。

Q. 引き継いだあと、また同じ人に知識が偏らないようにするには、どうすればいいですか。 A. 資料を作って終わりにせず、繰り返し行う作業の手順化、複数人での教え合い、社内と外部の役割分担という3つを組み合わせることが重要です。どれか一つだけでは、時間がたつとまた元に戻ってしまいます。

まとめ

他社から引き継いだシステムに資料がなくても、決まった順番で進めれば、立て直すことができます。大切なのは、資料を作ることから始めるのではなく、今のシステムがどう動いているのかを調べて見える化することです。そのうえで、進め方の計画、資料の整備、人を育てる仕組みという3つを組み合わせることで、引き継ぎ後の属人化も防げます。

PH Tech AIでは、CTO代行・技術顧問として、社内に技術の責任者がいない中小企業やスタートアップを対象に、システムの引き継ぎや現状調査をお手伝いしています。資料がない状態からでも構いません。まずは無料相談で、今抱えているシステムの状況をお聞かせください。

参考・出典

この記事を書いた人

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運営者 / AIエンジニア(IT歴36年以上)

  • ●IT歴36年以上
  • ●IBM認定 生成AIエンジニア
  • ●神田昌典氏 認定ライセンシー
  • ●中小企業・スタートアップのCTO代行・技術顧問

IT歴36年以上の運営者です。長年の実務経験と最新の生成AIを掛け合わせ、中小企業・スタートアップが技術の意思決定に自信を持てるよう、現場目線で記事を書いています。

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