IT顧問とは?技術顧問との違いと選び方、契約後1か月に会社が準備すること
社内にIT担当者がいない中小企業の経営者に向けて、IT顧問に頼めること、技術顧問との違い、選び方、契約後の最初の1か月に会社が準備し確かめることを解説します。

要約
- IT顧問は、社内のITインフラやセキュリティ、業務の効率化など、会社全体のITを経営の視点で支える相談役です。技術顧問は、自社プロダクトの開発に特化します。
- IT顧問を選ぶときは、知識の量よりも、自社のビジネスにどう貢献するかを見ます。今の人員・予算に合った提案か、経営陣と現場の言葉を通訳できるかも確かめます。
- 契約後の最初の1か月は、提案よりも現状の把握が先です。会社は聞き取りと現状調査に必要な情報を渡し、1か月後に小さな成果と、今後のITの取り組みの順番と時期をまとめた計画案を確かめます。
社内にIT担当者がいないまま、パソコンの管理やクラウドサービスの契約、システムの外注を経営者が自分で判断している会社は少なくありません。困ったときに相談できる相手として「IT顧問」を検討しても、何を頼めるのか、技術顧問とどう違うのかが分かりにくいと感じる方も多いと思います。
私はCEOやプログラマー、ネットワーク管理、マーケティング、Web制作、SEO/GEO、CTOの役割を一人で担っています。この記事では、その立場から、IT顧問を雇う会社の側に立って、頼めること、技術顧問との違い、選び方、契約後の最初の1か月に会社が準備することを整理します。
IT担当者がいない会社で起きやすいこと
IT人材が足りないのは、多くの会社に共通する悩みです。IPAの「DX動向2025」では、DXを推進する人材の「量」が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた日本企業は、合わせて85.1%でした。何らかの形でDXに取り組んでいる企業は、従業員1,001人以上では96.1%、100人以下では46.8%です。取り組んでいない100人以下の企業では、「自社がDXに取組むメリットがわからない」という理由が最も多く挙がっています。
社内に技術責任者がいない会社と話していると、次のような状況をよく見かけます。
- 外注先の言い値で契約している
- 保守費用が高すぎる
- システムを変えたくても身動きが取れない
- システムが分かる人が社内に1人しかいない
- その人が退職したあと、システムを扱える人がいない
最近はAIの導入でもトラブルが起きています。n8nがどういうツールかをよく知らないまま導入したり、構造化データとベクトルDBを区別せずに設計したりする例です。AIが出した間違った回答を、確かめないまま社内や顧客に共有してしまうこともあります。機密情報をAIのチャットにそのまま入力していたという話も珍しくありません。
どれも、技術の判断を任せられる人が社内にいないことから起きています。IT顧問は、こうした判断を経営者と一緒に行う役割です。
IT顧問に頼めること
IT顧問が扱うのは、会社の活動全般を支える情報システムです。具体的には、次のような領域を相談できます。
- 社内のITインフラ(パソコン、ネットワーク、クラウドサービスなど)
- セキュリティ対策
- バックオフィス業務の効率化
- SaaSや基幹システムの導入
- ITコストの最適化
IT顧問の役割は、経営戦略と現場のITをつなぐことです。IT専任の担当者がいない会社にとっては、ITに関することを幅広く相談できる相手になります。DXの推進について、全体を見渡して助言する役割も担います。
IT顧問と技術顧問の違い
IT顧問とよく似た言葉に「技術顧問」があります。どちらも社外から技術の判断を支える点は同じですが、対象とする領域が違います。
| 項目 | IT顧問 | 技術顧問 |
|---|---|---|
| 対象 | 企業活動全般を支える情報システム | 自社プロダクト(Webサービス・アプリ)の開発 |
| 主な相談内容 | 社内ITインフラ、セキュリティ、業務の効率化、SaaS・基幹システムの導入、ITコストの最適化 | アーキテクチャ設計、技術選定、開発チームのマネジメント、コードレビュー、エンジニアの採用・育成 |
| 役割 | 経営戦略と現場のITをつなぐ、DX推進の総合的な助言 | 開発組織のボトルネックの解消、プロダクトの品質とスケーラビリティの確保 |
社内の業務やITの環境を整えたいならIT顧問、自社でWebサービスやアプリを開発しているなら技術顧問が向いています。社外から技術責任者の役割を担う形は、CTO代行やフラクショナルCTOと呼ばれることもあります。CTO代行の役割は、CTOがいない会社の技術判断は、CTO代行という選択肢で変わるで説明しています。
ただ、中小企業やスタートアップでは、2つの悩みを同時に抱えることもよくあります。社内のITを整えながら、自社サービスの開発も進めなければならない場合です。そのときは、どちらか一方に絞らず、両方の領域を見られる相手に相談するほうが話が早く進みます。
IT顧問の選び方
IT顧問を選ぶときに確かめたいのは、次の3つです。
知識の量より、自社のビジネスへの貢献を見る
ITの知識が豊富なことが前提です。そのうえで見るべきなのは、その知識を自社のビジネスにどう生かしてくれるかです。よいIT顧問は、経営課題から逆算して、何に取り組むかを決めます。費用対効果の高い業務から効率化を提案できるかどうかが、経営の目線を持っているかの見分けどころです。
今の人員・予算に合った提案をするか
大企業向けの仕組みを、そのまま中小企業に持ち込もうとする提案には注意が必要です。導入しても使いこなせず、費用だけがかかることになりかねません。今の人員、予算、社員のITリテラシーを踏まえて、現実的な提案をしてくれるか確かめましょう。
経営陣と現場の言葉を通訳できるか
IT顧問には、経営陣の要望をエンジニアやベンダーに伝える役割があります。反対に、技術の課題を経営陣に分かる言葉に置き換える役割もあります。
私が経営者に説明するときは、技術用語を使わず、コスト、リスク、時間の3つで話します。たとえばクラウドへの移行なら、初期費用は減る一方で、毎月の固定費は増えます。そのかわり、障害が起きたときの対応は速くなります。このように、判断に必要な材料を経営者の言葉で示してくれるかを、最初の面談で確かめてみてください。
見積もりの読み方を聞いてみる
手元に外注先からの見積もりがあれば、候補の顧問にどう読むかを聞いてみるのも一つの方法です。私が見積もりを確かめるときは、設計、実装、テスト、保守の割合を見ます。極端に安い見積もりは、テストや運用保守の工数が抜けていることがあります。高すぎる見積もりは、要件があいまいなまま「念のため」として追加されている工数が多いです。
保守費用についても、開発費の何%といった数字では判断しません。何に対して費用がかかっているのか、内容を見て判断します。見積もりや保守費用の根拠を説明してくれる顧問がいれば、外注先との交渉が有利になります。見積書と契約書で確かめる点は、システム保守費用の相場より重要なことで説明しています。
契約後の最初の1か月に会社が準備すること・確かめること
IT顧問と契約したら、最初の1か月の進め方を確認しましょう。すぐに大きな提案を持ってくる顧問より、提案を急がない顧問のほうが信頼できます。最初の1か月は、現状の把握と信頼関係づくりを優先する期間だからです。
①聞き取りで会社が伝えること
最初は、顧問が経営陣から話を聞く段階です。会社としては、次のような内容を伝えましょう。
- IT投資の効果が見えにくいこと
- セキュリティに不安があること
- 業務が特定の人に頼り切りになっていること
- 今後の事業計画
聞き取りには、経営陣と社内のキーパーソンが対応します。現場の担当者だけに任せると、経営の課題と結びついた話ができません。
②現状調査で会社が渡す情報
次に、顧問が社内のIT環境を調べます。会社は、次の情報を渡します。
- パソコンの環境
- ネットワーク
- 利用しているクラウドサービス
- 契約しているベンダー
- 実施しているセキュリティ対策
顧問は、セキュリティの脆弱性やライセンス切れ、会社が把握していなかったSaaSの契約などを見つけることがあります。資料もなく、プログラムにコメントもないシステムが見つかることもあります。その場合は、いきなり改修するのではなく、まず現状を把握する期間が必要です。
③1か月後に会社が確かめること
1か月が過ぎたら、会社として次の2つを確認しましょう。
- 小さな成果が1つ出ているか(不要なSaaSの費用の削減、パスワード管理の統一、簡単な作業の自動化など)
- 今後のITの取り組みの順番と時期をまとめた計画案が示されているか
最初の1か月で、自社のIT環境の現状を把握できます。経営陣と顧問の目線もそろうため、その後の施策を進めやすくなります。
顧問を契約する前に使える公的な相談窓口
IT顧問と契約する前に、公的な窓口に相談するという方法もあります。よろず支援拠点は国が47都道府県に設置した無料の経営相談所で、ITを含むさまざまな分野の専門家が相談に対応しています。中小企業基盤整備機構のIT経営サポートセンターでは、予約制で1回60分のIT相談を無料で受けられ、IT利活用や導入の課題を整理できます。
公的な窓口は、課題を整理する入口として役立ちます。自社の継続的な状況判断や専門パートナーが必要になったら、IT顧問を検討しましょう。
よくある質問
Q:IT顧問と技術顧問、どちらに相談すればよいですか?
A:社内のパソコンやネットワーク、セキュリティ、業務の効率化が課題ならIT顧問が向いています。自社でWebサービスやアプリを開発しているなら技術顧問が向いています。両方の課題があるときは、両方の領域を見られる相手を選択しましょう。
Q:AIの導入もIT顧問に相談できますか?
A:相談できます。ただし、AIツールを入れるだけでは、かえって手間が増えて定着しないことがあります。先に業務の流れを整理し、まず1つの業務に絞って試すほうがうまくいきます。
Q:セキュリティが不安ですが、何から始めればよいですか?
A:IT顧問に相談する場合は、最初の1か月の調査で、パソコンやネットワーク、セキュリティ対策の状況を確かめてもらいましょう。あわせて、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」という選択肢もあります。相談窓口、異常の監視、事案発生時の初動対応などをまとめて提供するサービスです。IPAのサービス基準では、ネットワーク監視の場合の価格の上限を月額1万円(税抜き)としています。IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)で、利用料を最大2年間補助する制度もあります。
Q:IT顧問を選ぶとき、資格は目安になりますか?
A:ITコーディネータは、経済産業省が推進する資格です。資格を持つ人の中には、社外CIOや顧問として活動している人もいます。ただ、資格よりも、この記事で挙げた3つの点、つまり自社のビジネスへの貢献、現実的な提案、経営陣と現場の通訳ができるかが重要です。
まとめ
IT顧問は、社内にIT担当者がいない会社で、経営とITをつなぐ相談役です。技術顧問は、自社プロダクトの開発に特化している点が異なります。選ぶときは、知識の量より自社のビジネスへの貢献、今の人員・予算に合った提案、経営陣と現場の言葉を通訳する力を確かめてください。契約後の最初の1か月は、会社として聞き取りと現状調査に協力し、1か月後に小さな成果と、今後のIT計画案を確かめます。
PH Tech AIでは、社内に技術責任者がいない中小企業やスタートアップに向けて、CTO代行・技術顧問として技術の判断と開発体制づくりを支援しています。社内のITと自社サービスの開発の両方について、ご相談いただけます。今の状況を整理したい段階でも構いませんので、まずは無料相談をご利用ください。
参考・出典
この記事を書いた人
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