1000万円級の開発で決めた「やらないことリスト」
1000万円規模の開発を複数担当する中で、要件定義書とは別に「やらないことリスト」を先に合意しておくことと、性能・障害対応の条件を数値で文書に残すことの重要性を学んだ経験です。どちらも、契約書の一文一文が後々の関係性を左右することを痛感した経験でした。

重要ポイント
- 案件: オンライン英会話サイト/トレード分析サイトなど
- 規模: 1000万円級
- 良かった工夫: 「やらないことリスト」を発注側・開発側で先に合意
- 失敗から得た教訓: 性能・障害対応の条件を数値で文書化する
Q. 「やらないことリスト」とは何ですか?
A. 要件定義書とは別に、「今回のスコープにはこれは含めない」と最初に文書にして、発注側と開発側で合意しておくものです。開発の途中で出てくる「ついでにこれも」という追加要望によって範囲がなし崩しに膨らむのを防げました。追加要望自体は悪いことではなく、それを別契約とするか今回の範囲に含めるかを、その都度きちんと判断できる状態を作ることが目的です。
Q. なぜ、このリストが有効だったのですか?
A. 発注側は、契約時には気づかなかった要望をあとから思いつくものです。それ自体は自然なことですが、境界線がないと「言えばやってもらえる」という空気になり、スケジュールと予算がなし崩しに膨らみます。あらかじめ境界を明文化しておくことで、追加要望は「追加の相談」として扱えるようになり、双方が納得しやすくなります。
Q. 逆に、うまくいかなかった経験はありますか?
A. 初期の案件で、想定アクセス数や障害が起きたときにどこまで対応するか(いわゆるSLA)を曖昧にしたまま契約してしまったことがあります。システムが稼働してから、「そんな話は聞いていなかった」という食い違いが表面化しました。口頭でのやり取りに頼っていたのが原因でした。
Q. その経験から、今はどう変えていますか?
A. 要件定義の段階で「やること」だけでなく「やらないこと」を明文化すること、そして性能や障害対応の条件は必ず数値で契約書・仕様書に落とし込むことを徹底しています。「だいたい早く動く」「なるべく早く直す」のような曖昧な言葉は、契約書には残さないようにしています。
Q. 技術が分からない発注側にとって、これはどんな意味がありますか?
A. 技術の知識がなくても、数字であれば確認できます。「同時アクセス何人まで想定するか」「障害発生から復旧まで何時間を目標にするか」を数字で書いてもらうだけで、あとからのトラブルをかなり防げます。
Q. 「やらないことリスト」は、どんな案件にも使える考え方ですか?
A. 使えると思います。規模の大小にかかわらず、発注側と開発側の期待値がずれる原因の多くは、範囲の曖昧さにあります。小規模な案件であっても、最初に数行でよいので「やらないこと」を書き出しておくだけで、認識のずれをかなり防げます。
運営者メモ
これは技術の知識がない発注側の経営者にとっても、あとから「言った・言わない」の水掛け論にならずに済む、実務的にとても重要な工程です。
大規模開発ほど、契約の初期段階で交わした言葉の曖昧さが、後々大きなトラブルに育ちます。CTO代行として発注側に付くときは、この「境界線を先に決める」作業を、必ず要件定義の一部として組み込むようにしています。
契約書に「やらないこと」と「数値化した性能条件」を残すことは、技術の話であると同時に、信頼関係を守るための工程でもあります。

